「隙間に潜んでいる灰汁(あく)」

modmasa2004-07-03

有名なポンヌフ橋。Leos Carax「Les Amants Du Pont Neuf」「ポンヌフの恋人」の舞台となる橋。映画のシーンでは人通りがあまりない寒い冬だったが今回は夏という事もあり人通りが半端無かった。この橋の特徴は街灯橋の歩道の街灯周りに休息出来る半円形の背もたれ付きの石のベンチがあるところだ。映画でもここで主演の二人が路上生活をしているシーンが描かれている。ただ現在の橋は浮浪者などは居ない観光客が多い橋であった。
レオス・カラックスCaraxのアレックス三部作(Boy meets girl,Les Amants Du Pont Neuf,Bad Blood)の丁度二番目の作品。主演のジュリエット・ビノシュ、ドニ・ラバンだ。二人は、この映画の主人公たちの様に実際に路上生活をしてみたそうだ。喧嘩するカップルも現実の世界で起きていた出来事だったりする。現実との境を埋める作品作りの苦労がそんなところから伺える。彼の作品はホント好みが両極端に分かれる映画監督の印象を受ける。ホームレスの話なので映像的に拒否反のをする人も居たりするようである。そういう意味において現実の世界とはかけ離れていて映画に入り込めないみたいである。が、現実の世界だってこの様な環境はたくさんある。幼少時代から都市を見て来て最近感じる事は都市の灰汁の様な空間が中心部から消えつつある事に気づく。渋谷はそのような世界だ。20年ほどで街には若者しか居なくなった。ホームレスが居ても存在感が全くない。幼少期、地下鉄のコンコースや路上の隅に居たホームレスを見たときはとてつもない恐怖を感じた。今は空間がホームレスと言う存在を包込んでしまってるがのごとくに存在を消してしまってる。カラックス映画はこの覆われ消されて行く存在をきづかせる。空間の多様性にあるくすんだ部分が抜け落ちた世界とのギャップ。現にフランスを初めEUでは街の至る所でその隙間に潜んでいる灰汁を感じる。異臭であったり変人の行動だったり身の危機感、だったりする。

映画の前半はほとんど音楽はなく、アレックスの不器用で繊細な様子が淡々と描き出されている。ポンヌフから花火を見る場面を境に、クラシカルな音楽とシャンソンをベースに、少しずつ音楽が使われるようになっていく。そんなところはゴダールの影響なのだろうか。
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ポンヌフの恋人〈無修正版〉 [DVD]

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