「大人の絵本」

modmasa2004-07-17

最近では「文學界」の表紙や、劇団「NODA MAP」「白い巨塔」のタイトルバックにも使われていた野又穫。 Minoru Nomataの空想建築の作品は建造と修復、解体が同時進行し、未完のままそこに存在している。誰もが見たような、既視感を感じる単純な幾何学形態(円柱、円錐)で構成されてる建造物。そこには一切登場人物が存在しない、が確かに人が存在しているかのような印象を受ける。風車、テント、構造体、気球、螺旋階段そんな建築を構成する要素が不思議に人の気配を感じさせる。
エチエンヌ・ルイ・ブーレ(Etienne Louis Boullee)のニュートン記念堂やキリコの建築物との近似性を感じる。ただキリコ(Giorgio de Chirico)の哀愁漂うトーンも無ければブーレのシンメトリーの構成による神秘性はそこにはない。どこか辺鄙な場所に建造された構築物のようだ。ナウシカの風の谷に密かにあるような建造物。また、周囲の環境が無く背景が青空に覆われてるだけに天空に存在する建造物にも見える。現代の高層ビル群に見るユートピアとは違う何かが描かれている。明らかにモニュメントの建築だが何かが違う。
彼は言う「絵というものは、見る人がその前で立ち止まって多くの時間を過ごせるものであってほしい」「実際に建ってもおもしろくないと思う。僕の場合はその建物を描いているというよりも空気を描いているから、その背景が絵を包んでいるというところで僕の絵になってくるんです。」見る人が居て初めて成り立つ絵画。そこで幾度も交わされる無言の会話。「どんなところにこれはあるのか。」いつの間にか塔に上ってる自分が居る。空想絵画は絵本世代を離れた大人の絵本なのだろうか。
http://www.japandesign.ne.jp/GALLERY/NOW/nomataminoru/
http://www.dechirico.org/
http://www.fantasy.fromc.com/art/chirico.shtml/
BnF - Étienne-Louis Boullée
Points of View - 視線の変遷 - 野又穫作品集