「現代風刺画」

modmasa2004-09-03

山口晃,7年前の「こたつ派」で出てきた現代美術作家。最近では六本木ヒルズ日本橋三越100周年のCMを描いていたことで見たことある人は多いであろう。伝統的な大和絵の手法を用い、古今東西の事象や風俗を、時空を超えて架空の風景として再現している。古典的画面構成、緻密な線描の表現は伝統の絵画に見えるが、細部には騙し絵ともいえる巧妙な仕掛けが張り巡らされている。そんな表現は、明治以降日本美術界が西洋絵画を受け入れ、伝統的なアイデンティティを蔑ろにしてきた批判、現代社会風刺の視線の表現になっている。バイクにまたがってる武士、本来日本画には存在しえない人々が時空を超え入り乱れている。歴史と現実の事象の「ズレ」故に別次元の異空の世界を垣間見ているようだ。東京芸術大学油画専攻卒業の彼の絵は精密でありものすごく上手い、その技術だけでも圧倒されてしまう。書く行為による表現のすごさを痛感した作家だ。

山口の描く絵は、時間と空間を横断した超現実主義の作品が持ち味であり、昔風の建築透視図や屏風の作品が数多く描かれています。建物は木造、客は江戸時代の民衆、売り場や店員の容貌は現代のデパートといったように過去と現代が入り交じった百貨店の透視図を描いた「百貨店圖」、絵巻物の物語性を彷彿とさせる大作「山愚痴諦抄ー尻馬八艘飛之段ー」等、どの作品も巧みな描写を用い、過去と現在が同居した視覚の面白さを生かしており、新旧あいまったなかで現代的な作品へ昇華し、鑑賞者の眼を楽しませます。
彼の時流に流されない一貫した制作の姿勢は強い個性を持った作品を生み出し、現在、国内外で高い評価をうけています。

東大出版のHPの「作家紹介」より引用
1969年東京生まれ.96年東京芸術大学大学院美術研究科修了.97年「こたつ派」店(ミヅマアートギャラリー)に参加し,一躍注目を集める存在となる.油絵具を用いつつ,大和絵の表現を引用するという手法で描かれた作品は大変な人気を博している.洛中洛外図的な構成や吹き抜け屋台といった日本の古典的構図の中に,古今東西のさまざまな事象や風俗を同一画面上に取り込んだ作品や,人間を含めた動植物と近代化の象徴である機械という無機物を融合させた絵画も山口作品の魅力.画面の細部にまで張り巡らされた巧妙な仕掛け,遊び心やサービス精神に加え,矛盾した時代構成さえをも納得させるほどの高度な描写力は,海外でも単なるエキゾチズムを超えて高く評価されている.また最近は展覧会での発表の他にもCDのジャケットワークや書籍の挿絵(澁澤龍彦〈ホラー・ドラコニア少女小説集成〉第弐巻『菊燈台』,第伍巻『獏園』,平凡社)・パブリックアートなど更に幅広い制作活動を展開中.

MIZUMA ART GALLERY – MIZUMA ART GALLERY / ミヅマアートギャラリーMizuma-official – 会田誠・山口晃・天明屋尚・ジュングエンハツシバといった、スタイルに捕らわれない独自の感性を持った日本人及びアジア人作家を主に国際的なアートシーンに紹介。

山口晃作品集

山口晃作品集

獏園 (ホラー・ドラコニア少女小説集成)

獏園 (ホラー・ドラコニア少女小説集成)

菊灯台 (ホラー・ドラコニア 少女小説集)

菊灯台 (ホラー・ドラコニア 少女小説集)