「商業ビルの持って生まれた宿命か!」

modmasa2005-05-04

「イル・カセット」福岡市内にある古谷誠章+NASCAの商業ビル。
住所:福岡県福岡市中央区大名1-2-5 map:x130.3949y33.5858
最上階の店長さんが気さくな方ではるばる東京から見に来たと言うと隅々まで見せてくれた。
大吹き抜け空間に階段と通路が配置されている。大吹き抜け空間からは各階が見渡す事が出来る。
店舗と外通路と階段が吹き抜け空間を包んで居て、その空間が螺旋状のスパイラルの通路になって1Fから上階まで一本で繋がっている。
1Fから見上げると店舗の様子もあまり分からず井戸の底の感じが否めないが、一端内部に入ると各階の様子がそれぞれ違う様に見え興味深かった。
特に通路に箱状の個室群が並べてある店舗があったりと、その場の空間を上手く使ってる店もあったりしたのでそのように感じたのかもしれない。
商業ビルの持ってる性質なのかもしれないが、全体として寂しく人が居ないと尚更寂しさが募る空間ではあった。

今、福岡でつくっている商業ビルは、それこそ商業ビルですから中身は変わるわけですけれども、それだけではなくて、そこは将来容積が増えたら床が増やせるように引き出しになっています。「イル・カセット」というんですが、引き出しという意味です。施主が「イル・パラツィオ」みたいにしたいと言うので。イル・パラツィオは宮殿という意味ですが、こっちは引き出しです。ここは容積が増えたら足せます。こっちは本当の引き出しにするために全部逆スラブの工法にしました。ですから中身に美容室が来ようと、歯科医院が来ようと、レストランが来ようと、下の階に関係なく床下配管を全部取り替えられるような、本当のカラ箱引き出しを徹底してつくっています。

商業ビルにおいても可変型なんですね。
実を言うと、ほかの設計者でやることに決めていたそうです。その設計者の提案も既にあって、やりかかっていたんだけど、どうも完全には踏み切れないということで、知人の紹介で初めて会いました。仮に僕が考えるとしたらということで、この構想を話しました。将来容積が増えた時には増やせるように、それから中身も、オフィス・ビルで貸す単価と商業施設で貸す単価は全然違うわけで、オフィス・ビル仕様になっていては美容室などを入れられませんし、変えることもできません。しかし始めから考えれば、それを変えられるようにする方法もありますよと。まさかその時は自分がやるとも思いませんでしたので気楽に言いました。そのクライアントは「そうですか」と考え込んでしまいました。結局は最終的には頼みかかっていた人にそこまでの設計料を払って、あらためて依頼があったのです。
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通り反対側からのファサード。一階の店舗以外は何の店舗かはわかりずらい。一階以外は閉じられている雰囲気を感じる。

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各階の店舗の店が何か外からは良く分からない。逆に言うと、そこまで書く店舗が看板やガラスに広告を出して居なく落ち着いた空間ではある。

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一階吹き抜けから見上げた景色。外部に抜ける空間。