「抜け落ちた空間」
Elephant エレファント (2003)
印象に残る映画内の空間。
アル中の父親を持つ青年が一人で涙をこぼす、使われていない教室の空間。
特に日本には無いこの家庭的な空間が印象的だ。
床、ソファのテキスタイルも日本人から見るととても不思議に見える。
学校にはいくつもonとoffが入れ替わる空間(実験する理科室、図書室、雨の校庭、使われない体育館など)が沢山ある。
そんな抜け落ちた、offの空間。それこそ生徒の誰もにある小さな空間。それはある意味孤独なのだろうか。
内気な少女が訪れる誰も居ない体育館の空間。
目立った開口部が無く閉じられ、唯一のハイサイドの明かりが印象的。
offの空間の広さが切ない。
生徒の過ごす空間の半分は生活の母体の自分の家だ。
彼らは何をここで感じ生きていたのだろうか?
問題提起も、解決も無い映画、ただそれが故に伝わってくるものが大きい。
強く訴えかける映画では決してない。音楽を聴くような流れるような映画。
歩く時間が考えさせられ自己と向き合う、何はともあれ一つの世界。
今ここに同じ時に地球の裏側でこの事件の瞬間、事件に巻き添えにならずに居た自分。
世界はホント不思議でしょうがない。