「ジョゼと虎と魚たち-01」

原作田辺聖子の短編集を映画化した、監督: 犬童一心の作品 「ジョゼと虎と魚たち
大学生の恒夫と脚が不自由なジョゼと名乗る少女の出会いのお話。

映画は恒夫(妻夫木聡)のスナップ写真から始まる。静止画の連続。
クライマックスのシーンでジョゼと恒夫のドライブで恒夫がシャッターを切ったもの。
どこにでもある郊外、橋、土手、平屋、旅行、と日常漂う作品。

ストーリー
深夜の麻雀屋。大学生の恒夫は、その雀荘でアルバイトをしている。今日の客の話題は、最近近所で見かける謎の老婆のこと。決まって明け方にボロボロの乳母車を押して歩く老婆……乗せているのはミイラか?札束か?はたまたヤク……。客の妄想はつきない。明け方、いつものように店のマスターの愛犬と散歩に出かけた垣夫は坂の上から乳母車が走ってくるのに遭遇する。垣夫が近寄り、中を覗くと、包丁を握り締めた少女がいた。恒夫は危うく刺されそうになるが、間一髪で難を逃れる。乳母車の中身は老婆の孫だった。彼女は原因不明の病いで生まれてから一度も歩いたことがないという。老婆は近所に孫の存在を隠して暮らしており、夜明け間もない時間に乳母車に乗せて散歩させていたのだった。そのまま垣夫はふたりの家に連れて行かれ、朝食をごちそうになる。味噌汁に煮物にだし巻き---どれも美味しい。こうして、恒夫と脚の不自由な少女は出会った。

 常夫が少女に名前を尋ねると、彼女はジョゼと名乗った。老婆はくみ子と呼んでいるのに。垣夫は、不思議な存在感を持つジョゼに興味を持つ。一方で恒夫は大学の同級生の香苗に好意をもっている。竜顔に不釣合いな豊満ボディ。福祉関係の就職を希望している香笛との会話のネタに脚の悪いジョゼが家の中のあっちこちからダイブすることなども持ち出したりするが、いいとこのお嬢様だけに門限が厳しく思うように関係は進まない。ジョゼのことも気になる恒夫は、事あるごとに家を訪ねる。ショゼの部屋には祖母が拾ってきた様々なジャンルの本が溢れ返っている。その中から、恒夫が抜き出した一冊がフランソワーズ・サガンの「1年ののち」。いつもそっけないジョゼがその本の続編を読みたいと強く言う。恒夫は既に絶版となっていた続編「すばらしい雲」を古本屋で探し出し、プレゼントする。「ねえ、その主人公がジョゼっていうんだよね?」という恒夫の問いかけにジョゼは全く応じず、夢中で本を読みながら柔らかな笑みを浮かべる。そんなジョゼを見つめながら恒夫も微笑む。恒夫の計らいで国の補助金が降り、ジョゼの家の改築工事がはじまった。完成が迫ったある日、突然、香苗が見学に訪れる。戸惑う恒夫。「彼女?恒夫くんが言ってた、すごい元気な女の子」押入れの中でふたりの会話を聞きながらうつむくジョゼ。その日の夜、再び恒夫はジョゼを訪ねる。ジョゼは泣きながら本を投げつけ「帰れ!」と叫ぶ。恒夫は祖母に、もう二度と来ないようにと釘をさされる。



数ケ月後。

就職活動中の垣夫は、ジョゼの家の改築工事をした会社の見学へ。工事で知り合った現場主任から、ジョゼの祖母が急逝したことを知らされ呆然とする恒夫。恒夫は急いでバイクにまたがりジョゼの家へと急ぐ。もう訪ねることもないと思っていた懐かしい家。心なしかくすんで見える玄関。ジョゼは静かに恒夫を家に招き入れる。お葬式から最近の暮らしぷりまで、淡々と語るジョゼだったが、垣夫がショゼの行動に口をはさんだ途端に「帰れ!帰って、もう!」とわめきながら恒夫の背中を殴り始める。その怒鳴り声は、いつしか泣き声に変わり、やがて---久しぶりに再会したふたりは、お互いの存在を確認しあう様にひとつになる。ジョゼにとってははじめての経験だった。恒夫とジョゼは一緒に暮らし始める。ジョゼの家に運び込まれる恒夫の荷物。部屋が変わっていくのを不思議そうに見回すジョゼ。「ずっと一緒にいような」と恒夫が言う。ジョゼはぼんやりと空を見つめて微笑む。恒夫は徐々にジョゼのことを知っていく。二人は動物園に行って虎を見る。ジョゼには夢があった。いっか好きな男の人ができたときに、世の中で一番怖いもの…虎を見る、という…。濫の向こうで吼える虎と怯えて恒夫の腕にしがみつくジョゼ。それを見ながら恒夫は優しく笑う。



一年が経った。

社会人となった恒夫は繁華街で煙草を手に踊るキャンペーンガールの中に香苗をみつける。卒業以来初めて顔をあわせ、喫茶店で向かい合うふたり。香苗は恒夫に、一年前にジョゼを殴ったことを打ち明け、ボロボロ泣き出す。恒夫はそんな香苗を可愛いと思う。



ジョゼにとって生まれて初めての旅行。目的地は恒夫の実家。流れ行く景色、カーナビ、トンネル、全てに驚き歓声を上げるジョゼ。しかし、恒夫は実家にいる弟に電話をして、仕事の都合で帰省を取りやめると伝える。どうしても行きたかった水族館は休館日。子供のように半泣きで怒るジョゼをどうにかなだめ、恒夫が運転する車は海へと向かう。ジョゼにとって海はあまりに眩しく、恒夫はジョゼを背負って波打ち際でキラキラ光る貝殻もとめて駆けまわる。夜、ジョゼの目にとまったのは、"ラブホテルお魚の館〃の大きな看板。結局、ジョゼのわがままでそこに泊まることになり、大きな貝殻のベッドで愛し合う。そこはまるで海の底にいるかのような不思議な空間。寝息をたてている恒夫と、それをぼんやりと見ているジョゼ。二人を包み込むように部屋の中を泳ぐ魚たち。二人で過ごすささやかな幸せは、どこに流れついていくのだろうか…。
 ジョゼと虎と魚たち | アスミック・エース


ジョゼと虎と魚たち(通常版) [DVD]

ジョゼと虎と魚たち(通常版) [DVD]

ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)

ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)