「差別のあり方」

東野圭吾著「手紙」
「強盗殺人犯の弟」という差別をどうとらえるか、差別する社会とされる自分の関係。

    • 「差別はね、当然なんだよ。犯罪者やそれに近い人間を排除するというのは、しごくまっとうな行為なんだ。我々は君のことを差別しなきゃならないんだ。自分が罪を犯せば家族をも苦しめることになるー すべての犯罪者にそう思わせるためにもね。」

弟が勤めていた社長の一言。
差別をしようとしなくても、社会の仕組みによって勝手に自分も差別の参加者にる、それが現実。
そんな現実を、普通であれば差別なんかしたくないという理想論を廃しこんな社長の言葉で括っている。
最後まで考えさせられる作品。

    • この手紙を読んだ時の衝撃をわかっていただけるでしょうか。弟に縁を切られたことがショックだったのではありません。長年にわたって私の存在が彼を苦しみ続けてきたという事実に震撼したのです。また同時に、当然そういうことが予想できたのに、弟にこんな手紙を書かせるまでまるで気づかなかった自らの阿呆さ加減に、死にたくなるほどの嫌悪を覚えました。何のことはありません。私はこんなところにいながら、何ひとつ更生などしていなかったのです。(p417)

強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く…。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、感動を呼んだ不朽の名作。

手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)