「機能の追求美」
Bernd & Hilla Becher.NYメトロポリタンで彼らの作品を生で見た。同一の画面の中に、複数の同一施設(例えば給水塔)の写真をグリッド状に配置した作品はモノクロ写真でとても印象的だった。標本の様に並べて、相互の関係性を強く考えさせる作品技法は、時代が経った今でも新鮮に映る。近代の建築が写ってることもあり今は無き建造物にも感心がいってしまう。機能の追求によって生まれた形態には無駄のない研ぎ澄まされた美がある。この表現手法が彼らが見出したタイポロジーだ。当初は記録として評価されていたタイポロジーが、一貫してこの技法にこだわり続けた。1990年のヴェネツィア・ビエンナーレで、彼らの作品が彫刻の賞を獲得したことからも、狭義の写真表現の枠を超えた評価を得ている。B・ベッヒャーは1976年にデュッセルドルフ美術アカデミーの教授に就任、「ベッヒャー・シューレ」(ベッヒャー派)を自認する多くの後進作家を輩出している、アンドレアス・グルスキー、トーマス・シュトルート、トーマス・ルフ、カンディダ・ヘファー、ハイナー・シリングその中にはT・ルフのように、建築家とのコラボレーションによりミニマリズム的な作風を確立した作家もいる。
二人は1959年から、給水塔、冷却塔、溶鉱炉、車庫、鉱山の発掘塔などドイツ近代産業の名残が残る、戦前の建築物をともに撮影するようになります。「無名の彫刻」と命名したそれらの写真を比較対称し機能種別に組み合わせたタイポロジー(類型学)の作品で過去を内在した現在を指し示そうとしています。
彼らのタイポロジー、ドキュメント、コンセプチュアル・アートの要素を併せ持った質の高い写真作品は1920年代ドイツで発生した徹底的な客観描写を掲げて絵画から写真を自由化した「新即物主義」のアルベルト・レンゲル・パッチュやアウグスト・ザンダーなどの延長上として評価されています。
彼らの作品は写真よりも60年代のコンセプチュアル・アートの流れで見出されます。 1963年に地元のギャラリーで初個展、1969年にはデュセルドルフ市立美術館で個展を開催しています。 1970年には写真集"Anonyme Skulpturen:A Typology of Technical Construcions"を発表、同年ニューヨーク近代美術館で開催された「インフォメーション」展に参加しています。
冷徹に撮影者の主観をなくした客観的な表現方法はミニマリズムの範疇で語られることも多く、特に1980年代以降に現代アートとして高い評価を受け、活躍の場を欧州、米国へと拡大しています。1990年ヴェニス・ヴィエンナーレのドイツ代表に選出、2004年にはハッセルブラッド国際写真賞を受賞しています。いまや現代アートオークションで作品が高額落札されることが多い世界的人気アーティストです。
1976年以降ベッヒャー夫妻はデュッセルドルフ美術アカデミーで教師としても才能を大いに発揮しています。彼らが指導したアンドレアス・グルスキー、トーマス・シュトルート、トーマス・ルフ、カンディダ・ヘファーなどはベッヒャー派と呼ばれ、タイポロジーという共通の興味で作品を発表し、現代アート分野で世界的に成功しています。
artnet
http://www.diacenter.org/exhibs_b/becher/
`W /xbq[V [
http://www.think-photo.net/archive/lecture/kobayashi/kobayashi_lecture1.html
工場萌えな日々