「人と人との接点で生まれる場」(場=空間、状況)

modmasa2004-08-23

吉阪隆正,早稲田大学芸術学校(旧早稲田大学専門学校)の校長。早稲田時代は丁度U研究室だった鈴木恂先生を始めとしたU研出の建築家達が世に広めようとしていたころで、学生の間ではあまり知られていなかった。写真を見る限り先生そのものだ。吉阪隆正はその生涯の中で建築家、都市計画家、登山家、国際人、教育者など多くの顔を持っていた。吉阪の没後25年を記念した展覧会が開かれようとしている。ル・コルビュジエのアトリエに勤務。坂倉、前川に比べて知名度が不思議と低い。彼が発言した言葉は、身近な人に対してのメッセージが多く、故に一般的な言語になりずらかったからなのだろうか。展覧会に寄せる内藤 廣(内藤廣建築設計事務所 | Naito Architect & Associates)の言葉がそのことを物語っている。1954年吉阪研究室(1964年U研究室と改称)を創設。ヴェネチア・ビエンナーレ日本館、アテネ・フランセ、大学セミナー・ハウスなどを設計する。また、今和次郎に師事し、農村、都市、地域への提案を展開。『住居学汎論』など多数の著作があり、『吉阪隆正集 全17巻』としてまとめられている。日本建築学会会長、生活学会会長を歴任。日本山岳会理事を務め、赤道アフリカ横断とキリマンジャロ登頂、早大アラスカ・マッキンレー遠征隊隊長、そしてヒマラヤK2遠征を組織するアルピニストであり、地球をその足で駆け巡り、人と人をつなぐ、ことばとかたち、生活とかたちを語り続けた。「人と人との接点」を模索し続けてた学生時代は今振り返ると早稲田時代の影響が色濃いように感じる。建築家の生き方がデザインするだけではないと言うことを知ったのもこの頃だ。建築の基礎を成す人の存在、それを模索する内に「人と人との接点で生まれる場」(場=空間、状況)がテーマになっていたように感じる。吉坂も建築と社会との交流や国際交流に積極的に関わっていた。M美術大学卒業時の卒制展示+diplo-mauarchi出版はその集大成であった。(点>線>面>多面体へ)設計への基礎はその時に形成されていたのだろう。そして今、有形デザイン機構(内閣府承認NPO法人)で模索してる事はその第二段階なのだろう。「Platform」多種多様な関係によって生まれる可能性を探る冒険なのか。
http://www.youkeidesign.org/

内藤廣 著
吉阪を中心としたコミュニティーの絆があまりに強烈だったということもあるが、生まれつき人の輪に加わるのが得意ではない。性分なのだと思う。だが、今回はアウトローでは済まないようだ。大学の教師になって初めて気付くこともある。吉阪が伝えようとしたことが、いかに貴重なことだったか、その実践の場であった建築や都市計画が、いかなる意味と価値を持っていたのか。吉阪に出会った歳に近くなりつつある今、それらの事をひしひしと感じつつある。あのわけの分らない何かを、今に伝えなければならない。
  振り返って、吉阪の仕事や人生が、分かりやすく整理出来る類いのものか、といえば、そうでないような気がする。吉阪が伝えようとした事は、論理的なものではない。吉阪の中では様々なものが、矛盾し対立し合っている。有名な不連続統一体などという謎掛けのような言葉は、彼自身のことだったのではないかとすら想像する。彼は彼なりのやり方で、人間の可能性、想像力の可能性を若者や世の中に示そうとしたのだと思う。残念ながらそれは、吉阪個人の人格に負う所が大きかったので、直接接しないと分りにくい。同じ言葉でも、違う人が言ったなら、まったく違った様相を帯びたろう。これが吉阪の成した事の大きな欠点であり弱点でもあったと思う。
  今回の展覧会の大きな目的は、今の若い世代に吉阪の残した分かりにくい諸相の某かを伝える事にある。これまで吉阪コミュニティーの囲いの中にあったもの、その囲いを解いて、吉阪に直接触れた事がない世代に価値を開いていく事にある。したがって、展覧会の企画も若い世代が中心になって行なわれる。私も含めて吉阪を直接知る世代は、サポーター役に徹するはずだ。
  まとめあげるのは大変だろう。いや、まとめる必要などないのかも知れない。得体の知れないものに手探りで挑戦する勇気こそが、吉阪の精神に叶うのだと信じたい。これまでに幾度か吉阪の展覧会は開かれているが、若い世代による開かれた試みは初めてだ。懐古的なものではなく、個人崇拝の色彩を帯びたものでもなく、あたらしい吉阪像が提示される事と思う。
たぶん吉阪だったら尻込みしがちな若者達にこう言うと思う。
「思いっきりやりなさい。ただし、責任と自覚を持って。」
多くの若者が、参画される事を望みたい。


http://www.taka2004.com/
http://www.msuzuki-lab.com/3_yoshizaka/3-01/aij.html
http://www.suzuki.arch.waseda.ac.jp/3_yoshizaka/3.html
http://www.citta-materia.org/archifile/d_seminar_h01.html
http://www.citta-materia.org/archifile/athenee_francais01.html
http://www.janis.or.jp/users/nozawasg/lodge-1.htm
http://www.pref.toyama.jp/sections/3009/ta_sisetu.htm
http://www.norisa.com/kurehatyuu.htm