「儀礼的無関心」

儀礼的無関心

civil inattention / civil indifference。カナダ出身の社会学者、アーヴィン・ゴフマン(1922-82)が提示した概念。「市民的無関心」と訳されることもある。知らない人に、あえて、もしくは、いつの間にか、儀礼的に無関心を呈示をする/している現象のことを指す。見知らぬ他人同士のあいだで、不要な関わりが生じるのを避けるための暗黙のルール。

そこで行われることは、相手をちらっと見ることは見るが、その時の表情は相手の存在を認識したことを(そして認識したことをはっきりと認めたことを)表す程度にとどめるのが普通である。そして、次の瞬間にすぐに視線をそらし、相手に対して特別の好奇心や特別の意図がないことを示す。
(E.ゴフマン『集まりの構造』丸木恵祐・本名信行訳/誠信書房/1963=1980:p.14/asin:4414518040

現代の大都市においては、自分以外の人間は「知り合い」と「知らない人」に分類されるようになった。よそ者と違って、知らない人は「単に知らない人」に過ぎないのであって、個々人はそういった知らない人に対して多くの場合「無関心」に振る舞わなければならない。これを「市民的無関心civil indifference」と呼ぶ。この市民的無関心、つまりよけいなコミュニケーションをしないことこそ、都市生活を可能にしている相互行為上の条件なのである。