「言うは易く行うは難し!」

modmasa2005-03-06

久々の本、「イラクの小さな橋を渡って」池澤夏樹著。「小さな橋を渡った時、戦争というものの具体的なイメージがいきなり迫ってきた」そこからこの本は始まる。2001年国連が経済制裁で発表したイラクの死者の数は、1500000人(150万人)そのうち620000(62万人)が5歳以下だという。0を数えただけでぞっとする。恐ろしいことに同じ150万人でも1500000人の方がとてつもない人に感じてしまう。文字の脅威がこんなところにもあるのだろうか。
>>「食べ物の不足もさることながら、医薬品が入ってこなかった影響は甚大だった。この時期、乳幼児の死亡率は五倍になったという、普通ならばなんでもないはずの肺炎なのに、抗生物質がないために子供達はあっさりと死んでしまう。」「辛い時期、人々は必死で働いた。1985年に知的な職業に就く者の月収は200ドルだったが、禁輸の時にはそれが3ドルまで下がった。学校の教師が仕事の合間にタクシーの運転をする。誰もが目先のことばかり考えて、健全な価値観を捨ててしまった。だからその時代の育った若者たちには今も人生の方針や目標がないと老人は嘆く」<<制裁を加えると沢山の事が影響し合いその国で普通に暮らしてる市民の未来を潰してしまう。

この戦争を止められなかったら、次の戦争も止められないだろう。国際政治を動かすのは議論ではなく武力ばかりになるだろう。
 ナシリヤの町で、一人の男がロータリーの縁石を白と緑に塗り分けていた。走る車の中から一瞬見ただけだが、ペンキの刷毛を動かすその手の動きをぼくはよく覚えている。世界中どこでも人がすることに変わりはない。自分と家族と隣人たちが安楽に暮らせるように地道に努力すること。それ以外に何があるか。
 まだ戦争は回避できるとぼくは思っている。(あとがきより)

   If we can't stop this war, then what hope is there of stopping the next war? International politics will be driven not by discussion , but by military force.
In the city of Nasiriyah, a man was painting the curbstones white and green around a traffic rotary. I only saw him for an instant out of a moving car, but I can still see the way his hand worked the paintbrush. A simple action people do the same way everywhere. Just trying to get along, trying to live comfortably with the family and neighbors. What else is there, really?
I believe we can still avoid this war.
[Natsuki IKEZAWA]

「戦争というのは結局、この子供たちの歌声を空襲警報のサイレンが押し殺すことだ。恥ずかしそうな笑みを恐怖の表情に変えることだ。それを正当化する理屈をぼくは知らない。」この本の最後の綴り。毎日のように流れる報道番組。恐ろしいことに「感動」すら今日では消費の対象になってしまっているのではないだろうか。戦争反対!言うは易く行うは難し。

http://photos13.flickr.com/19141377_eef5fbc5e4_o.gif

イラクの小さな橋を渡って